[記事公開日]2016/06/04
[最終更新日]2016/06/09

【読書】石油ビジネスの仕組み(5)

–石油ビジネスの仕組み–

2006年 茂木源人

 

●石油業界は上流部門と下流部門に分けられる。

・上流部門
油田の発見、探鉱、開発、生産

・下流部門
精製、販売

 

●原油価格決定の歴史

(1)基準地点方式

米国系などの石油メジャーの力が強かった当時、特定の基準点(メキシコ湾)から積み出されたと仮定して価格が決まっていた。輸入国であるアメリカからすると、輸送距離が中東から計算されるよりも近くなるため有利になる(価格が安くなる)。

(米国原油の公式価格+メキシコ湾から中東までの運賃)

メキシコ湾

 


(2)第二次世界大戦後、地点はペルシャ湾となる。

理由:当時のメキシコ価格がペルシャ湾価格として用いられていたため。

ペルシャ湾

 


(3)所得税納入方式

産油国側が利権料の上乗せとして「操業利益の50%」の上乗せを求めるようになった。
※利権料:石油の採掘権を認めた対価として受け取る利益。使用料。

(4)石油メジャーが無断で価格引き下げをするため、価格維持を目的にOPECが結成される。

・「課税対象価格(OPECによる公示価格)の設定」

・「石油会社の所得税引き上げ」

・「ロイヤルティーの引き上げ」

などの目標をかかげた。

 

●原油取引の契約種類

・ターム契約
→価格を時価とし、予め年間購入量を決定する。定期的に発送する。

 

・スポット契約
→その場での原油の受け渡しがあることを前提に取引が相対で決まる。
かつて(1970年)はターム契約での余剰原油を処分するために用いられていた。(在庫処分)

 

産油国は政府がコントロールするGSPで販売していた。各国のGSPはサウジアラビアのアラビアンライト原油に対して、輸送コストなどを加算して決めていた。

非OPECによる供給増大と世界的な景気後退による需要減のため供給が過剰になった。

スポット市場での原油価格は安くなるため、スポット契約での取引量が増えた。

 

・ネットバック価格方式
石油の市況をより忠実に反映する。

 

・フォーミュラ価格制
(市況連動型価格設定システム)

スポット市場や先物市場で取引される価格に公式販売価格(OSP)をリンクさせたもの。

仕向地ごとに指標原油があり、その価格からフォーミュラ(計算式)を使ってOSPを算出する。

(OPECが原油価格を決定した時代が終わった)

 

フォーミュラ価格制の公式:(プラッツ・ドバイの月平均+プラッツ・オマーンの月平均)÷2+α

※「+α」は色々な情報をもとに毎月発表される。

プラッツとはエネルギー情報サービス会社「プラッツ社」のことで、原油を評価している。

 

●フォーミュラ価格制はお互いにメリットがある?
産油国:フォーミュラ(計算式)をコントロールすることで、特定地域への販売強化や、アジアなどの交渉力のない国々に強い交渉ができる。

消費者:ターム契約価格がスポット市場価格に近づき、安定的に原油を引き取ることができるようになった。

 

●指標原油
それぞれの市場で各種原油の価格を決める際、基準となる原油のこと。

スポット契約の増加により必要とされるようになった。

 

イギリス「フォーティーズ原油」を使用する →のちに「ブレント原油」に代わる
サウジアラビア「アラビアンライト原油」→「ドバイ原油」に代わる
中東地域での非OPEC「オマーン原油」
アメリカ「WTI原油」(生産量は多くないが、ペーパー取引がとてつもなく多い)

現在
欧州:ブレント原油
中東:ドバイ原油
アジア:ドバイ原油、オマーン原油
アメリカ:WTI原油

 

産油国から原油を買い取るときはターム契約が中心である。

ただし、価格はフォーミュラ価格制。

 

輸送用のタンカーは買い手側が手配し、万が一手配できない場合も買い手側が責任をもつ。

買い手側は船積みする前月の10日前後に「ノミネーション」という手続きにより「何日にどれくら

いの量ほしいか」を産油国側(正確にいうと産油国の国営石油会社)に提示する。

仕向地(船がたどり着くところ)によってフォーミュラ(価格決定の計算)が決まるため、そのとき

の都合で仕向地を変更することはできない。

 

●スポット取引

原油取引の3~4割がスポット取引といわれている。

世界の原油のスポット取引はアジア、北米、欧州という3つの主な市場を中心に行われている。アジアでいうと、拠点はシンガポールとなる。シンガポール内にはトレーダーがいることになる。

 

サウジアラビアのサウジアラコムが販売する原油は100%ターム契約。

日本も、8割以上ターム契約で取引している。

 

●原油先物

原油先物は、取引所での取引で現物の受渡しがなく、書面上での契約であるから「ペーパーオイル」とも呼ばれる。(IT化されたけど・・)

 

先物市場は「厳格なルールに基づいて大量に取引が行われる」ため公正な価格が形成される。市場もオープンである。
必要なときに必要な量を購入すれば、市況変動リスクはないが、冬場の需要期に備えて夏場の閑散期に買いだめをするなど。価格変動をうまく利用するケースがある。また、タンカーの都合であるときには必要以上に購入することもある。

 

この場合、将来的に原油の価値が下がったときに市況変動リスクが生じる。

石油会社は「余剰原油が本来購入されるべき時期に変われたようにする」などのリスクヘッジ

(リスク回避)を行っている。

 

例:3か月後に100リットル購入したいと考えている。
現在の価格は1リットル100円

リスクヘッジのため、先物市場で100リットル買っておくことにした。

3カ月後、原油価格は高騰し1リットル120円になった。

まず、購入予定だった100リットルを時価で買う。

「120円×100リットル=12000円
(本来は10000円で購入できたはずだが・・)

一方、先物市場では、先物市場がと現物市場が連動していると過程した場合、「20円×500リットル=2000円」利益を出している。

時価での取引と先物取引でのプラスマイナスはゼロになった。 リスクヘッジがうまく働いたことになる。先物市場で「買っておくこと」を買いヘッジといい、その逆に「売りヘッジ」(将来、現物を売る予定があれば、先物市場で売っておく)もある。

 

●なぜ、先物市場を利用する?

→信用リスク(相手の会社が倒産する可能性)の問題や、在庫管理などのコストが理由。

 

●日本に輸入される取引形態

DD(ダイレクトディール)

→産油国(国営石油会社)と国内元売石油会社での取引で石油メジャーや商社を通していない。産油国のOSP(公式販売価格)による1年間のターム契約が基本。

※産油国からの輸出は基本的に「ターム契約」(一定量を複数回に分けて送る)と考えてよい。

 

その他、国内元売石油会社がメジャーと契約を結ぶ場合や、商社が産油国とターム契約を結びスポット市場へ回すこともある。

 

売る側:産油国、石油メジャー
買う側:石油会社、商社、トレーダー(専門会社、証券会社、銀行)

 

●原油価格に影響するもの

原油輸入価格の推移

 

・基本的には需要と、供給のバランス。

・先物価格(ヘッジファンドの参入も含む)

・世界経済(経済規模の大きい国の原油消費量)

・季節的な問題(冬の需要期、ゴールデンウィークのガソリン需要など)

・アメリカ石油製品の在庫

・OPECの生産割り当て(増産したり、減産したり)

・OPECの生産余力

・掘削リグの稼働率

・産油国における戦争や地域紛争

・ハリケーンなどの自然災害

・サボタージュ(生産設備の破壊)

・石油労働者のストライキ

・各国のエネルギー戦略

など

 

●石油消費量
アメリカ25%
中国8%
日本6%

くらい。

 

●IEA(国際エネルギー機関)

・第一次オイルショック後に設立された。

・エネルギーの安全保障、中長期的に安定的なエネルギー需給構造を確立する

・OECD(経済協力開発機構の倍部組織)

・加盟の条件:OECDに加盟していて、前年の1日あたり石油純輸入量の90日分の備蓄基準を満たしていること。

 

●「協調的緊急時対応措置」

(1)1991年湾岸戦争時
日量250万バーレルの備蓄原油が約1ヶ月半市場に供給された。
原油価格の沈静化に大きな成果をあげた
日本は35万バーレル放出した

 

(2)2003年イラク侵攻

実際の備蓄取り崩しは行われなかったものの、アナウンスメント効果により市場に肯定的な影

響を与えた。

 

●備蓄について

国家備蓄:日本国内に10カ所ある

民間備蓄:備蓄義務のある民間石油会社等により、約3,288万klの原油および石油製品が備蓄されている。

合計:約8,070万kl(石油)

日本での消費の約197日分が賄えることになる。

※2015年データ

 

●石油開発に携る企業

・三井物産

・伊藤忠

・三菱商事

・丸紅

・双日

など

 

日本は世界第三位の石油消費国として、石油、天然ガスの開発にも応分の責任を負ってる。”探鉱・開発リスクはすべて他人に任せて、石油のもたらす経済的恩恵を享受するだけ”というのは責任放棄以外の何物でもない。(もちろん企業なので利益を出すことを前提に活動している・・)

 

●原油から石油製品になるまで

石油精製温度

 

原油

LPガス

ガソリン

ナフサ

灯油

ジェット燃料油

軽油

重油

アスファルト

例:ナフサ

(石油化学誘導品工場にて)

⇒エチレン

⇒プロピレン⇒ポリエチレン、エレチングリコール

⇒ブタジェン⇒ポリプロピレン

⇒ベンゼン⇒自動車のタイヤゴム、有機溶剤

例:ポリエチレン、エレチングリコール、ポリプロピレン
→プラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、合成洗剤・界面活性剤など。

 

●オイルショックとは?
1973年
イスラエル占領下にあったシナイ半島及びゴラン高原をめぐりソレンの支援を受けるエジプトシリア連合軍と米国の支援を受けるイスラエルとの戦争がおこった。アラブ諸国対イスラエルの全面戦争となった

OPEC加盟国のうち6ヵ国は原油の公示価格を引き上げた。
OAPEC(アラブ石油輸出国機構)はイスラエルがシナイ半島から撤退しない限り、毎月原油生産を5%ずつ減らすと発表した。同時に、イスラエルを支援する米国およびオランダへの禁輸を決めた。

日本国民はガソリンはともかく、トイレットペーパーまでも無くなると勘違いした。

石油会社や商社は原油の確保に働いたこともあり輸入量は下回ることはなかった。OPECまでも価格を

上げ、結果的にわずか1年足らずで原油価格は4倍に膨れ上がった。

 

●原油価格が上がるとどうなる?

・実質賃金が減ることで景気悪化につながる

(価格が上がっても消費量は変わらない)

 

全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を表す消費者物価指数において、エネルギー関連の項目を見てみます。「消費者物価指数年報」(総務省)で、基準年(2010年平均)を100とした場合の物価指数を見ると、全体(総合指数)の変動はごくわずかであるものの、「光熱・水道」は2011年平均103.3、2012年平均107.3、2013年平均112.3、2014年平均119.3と、年々上昇しています。エネルギー関連の個別項目の2014年平均の消費者物価指数を見ると、「電気代」126.0(前年比8.1%増)、「灯油」138.0(同5.9%増)、「ガソリン」123.2(同4.9%増)と、顕著な上昇が見られます。

引用:http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2015html/1-3-2.html

 

●ガソリンにかかる税金
日本の支出に占めるガソリンの割合は約1.5~2%(アメリカは約5%)

 

●ガソリン代の内訳<税抜100円の場合>

(1)原油輸入価格(23円)

(2)ガソリン税(暫定税率25円+本則税率28円=53円)

(3)原油輸入関税+石油税(2円)

(4)精製コスト(5円)

(5)石油会社の利益(7円)

(6)ガソリンスタンドの利益(8円)

(7)消費税(8%)

※二重課税ではないのかとウンヌン・・

結果的に、仮に原油価格が1.5倍なっても「(1)原油輸入価格(23円)」の部分しか高くならないため、ガソリン価格は1割くらいしか値上がりしない。(^^)

 

●原油はあと何年後になくなる?
→結論、分からない。

そのヒントと、使われる用語たち

資源量:現時点で地殻内に集積されている資源の全量
埋蔵量:現在の技術で経済的に回収できるもの
確認埋蔵量:地質学的、工学的観点からほぼ確実に回収されるであろう埋蔵量

R/P(可採年数)
(R=確認埋蔵量、P=生産量)

「今の年間生産量で生産を続けたとして、ほぼ確実に回収できる石油の量=確認埋蔵量があと何年分あるのか?」

※可採年数も油田の発見や技術などで増えることもあるので正確な答えは、不明。

 

●非従来型石油資源

(1)「タールサンド」(カナダ):超重質油。日量100万バーレル。経済合理性をもって商業生産されている。

ベネズエラでも発見された。

 

(2)「オイルシェール」:米国、ロシア、ブラジル、中国などで発見されている。

 

●新エネルギーには限界がある?

太陽光発電
太陽熱利用
風力発電
廃棄物燃料製造
廃棄物発電
廃棄物熱利用
バイオマス燃料製造
バイオマス発電
バイオマス熱利用
温度差エネルギー
雪氷熱利用
電気自動車(ハイブリッドを含む)、天然ガス自動車、メタノール自動車
天然ガスコージェネレーション
燃料電池
引用:http://www.enecho.meti.go.jp/about/faq/004)

 

一次エネルギー供給量に占める新エネルギー供給量の割合は、約1.8%(2003年度)

政府としては、新エネルギー導入目標を、2010年度に原油換算で1,910万kl、新エネルギーの一次エ

ネルギー供給量に占める割合を3%程度と設定している。

※一次エネルギー:自然界にあるエネルギー。石油、石炭、太陽熱など
※二次エネルギー:加工されたエネルギーのこと

 

新エネルギー(代替エネルギー)の開発や発電よりも、節電などで石油消費を減らした方がはるかに効果があるとのこと。例えば「風力発電は石油の何分の1に相当するか?」というデータを見るとゾッ!!とする・・・。ひえぇぇ。

 

~その他参考~

・TOCOM
http://www.tocom.or.jp/jp/nyumon/textbook/oil/oil7.html

 

 

 

最後が長くなってしまいましたが以上です。(^^)

 

 

yamatunes